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会社の公告の方法は登記事項で、次のいずれかを定款で定めることができます。(会社法第939条)
1 官報に掲載する方法
2 時事に関する事項を掲載する日刊新聞紙に掲載する方法
3 電子公告
定款に定めがない場合は、官報に掲載する方法となります(会社法第939条第4項)。
これらの公告方法については、「官報に掲載する方法および電子公告」や「A紙およびB紙」のように重畳して定めることができますが、「官報に掲載する方法または電子公告」や「A紙またはB紙」のように選択的に定めることはできません(大正5年12月19日民事甲1952号)。また、「○○の場合以外はA紙、○○の場合はB紙」というように、各事項につき、それぞれの公告方法を定めることもできません。
一般的には官報公告を選択している会社が多く、実務上弊害がなければ問題ありませんが、各々の方法にメリット・デメリットがありますので、しっかり考えてください。
■理想の公告方法
設立時の公告方法は「当会社の公告は、官報に掲載する方法により行う。」とするのが理想です。
■公告とは
会社は決算公告など、各種の情報を公告することが諸法令により義務付けられています。合併公告・資本金の額の減少公告・準備金の額の減少公告・解散公告などのように、法令により官報掲載が義務づけられているものと、決算公告・株券提出公告・基準日設定公告などのように、定款で定められた方法により行うものがあります。
会社法976条第2号に、「会社法の規定による公告若しくは通知をすることを怠ったとき、又は不正の公告若しくは通知をしたときは、100万円以下の過料に処する」と定められています。
しかし、決算公告などは、公告をしなくても実際に罰則が科せられたことはないと言われているので、実務上弊害がなければ、公告をしないケースが圧倒的に多いのが現実です。中小企業はそれほど問題ないかもしれませんが、上場会社、上場会社の子会社、不特定多数の投資家がいる会社は、コンプライアンス重視が大切です。忘れずに公告をするようにして下さい。
■官報に掲載する方法
公告方法を“官報に掲載”とする場合のメリットは、費用の安さです。料金は1行につき2,936円(税込/2014年4月1日現在)です。公告の内容や、会社名の長さ等により必要行数は変わりますが、数万円から行うことが出来ます。
デメリットは、時間がかかる事です。申込みから掲載まで2週間程かかるので、タイムリーな公告を望む場合にはふさわしくありません。
官報に掲載する方法を選択する場合、定款の記載に注意が必要です。
定款への書き方は、
『当会社の公告は、官報に掲載する方法により行う。』 となります。
登記独特の用語で、日本語的に美しくないように感じるかもしれませんが、法務局に確認したところ、“公告する方法”なので、“○○に掲載する”という表現になるそうです。
かつて、「官報に公告する」という書き方だと登記が通らず、補正になった事があります。その時は、「官報に公告してする」に変更しました。2014年8月現在、法務局のホームページの見本は「官報に掲載してする」となっています。どれも意味は同じです。
■時事に関する事項を掲載する日刊新聞紙に掲載する方法
時事に関する事項を掲載する日刊新聞紙とは、日本経済新聞などの全国紙の他、地方紙も該当します。スポーツ新聞や、特定の産業分野の業界紙など、読者として一般人を対象としていない新聞は含まれません。また、週間新聞紙や旬刊新聞紙も含まれません。
公告方法を“日刊新聞紙に掲載”とする場合のメリットは、タイムリーに公告を行える事です。申込みから掲載までに、官報ほど時間を費やしません。
デメリットは、費用の高さです。50万円以上かかる事もあります。新聞社によって、掲載までのスケジュール・費用が異なるので、きちんと調べておく必要があります。
定款への書き方は、
『○○新聞に掲載する方法により行う。』 となります。
また、「○○県において発行する○○新聞」と、発行地域を限定して定める事も可能です。これは必須事項ではありませんが、発行地の定めがないにもかかわらず地方版に公告を掲載した場合、取扱い等に疑義があるとみなされる為、発行地を特定する事が望ましいとされています。
■電子公告により行う方法
電子公告を行う場合、登記したURLに公告を掲載した後、電子公告調査機関に調査を委託し、認証を受けなければなりません。
定款への書き方は
『当会社の公告は、電子公告により行う。』 となります。
また、事故その他やむを得ない事由によって電子公告による公告をすることができない場合の公告方法(官報又は日刊新聞紙のいずれか)を、定款に定めることができます(会社法第939条第3項)。
この場合、定款への書き方は、
『当会社の公告は、電子公告により行う。ただし、事故その他やむを得ない事由によって、電子公告による公告をする事ができない場合は、官報に掲載する方法により行う』
または、
『当会社の公告は、電子公告により行う。ただし、事故その他やむを得ない事由によって、電子公告による公告をすることができない場合は、〇〇新聞に掲載する方法により行う。』 となります。
無理に電子公告のみを選択するのは、意味無く負担がかかるので、あまり良くありません。予備的な公告方法を定めておくことをオススメします。
いずれの場合も、ウェブページのURLの登記が必須となります(会社法第911条第3項第29号イ)。
決定されたURLは通常半角文字で表記しますが、登記する際は、登記情報システム上、全角文字で表示されます。
そのため、登記申請書には全角文字で記載します。
『当会社の公告は、電子公告により行う。
http:〜(公告を掲載するURL/全角文字/以下略)
ただし、事故その他やむを得ない事由によって、電子公告による公告をする事ができない場合は、官報に掲載する方法により行う』
なお、定款には公告方法を定めれば足り、URLまで定めておく必要はありません(会社法第939条第3項)。この場合、発起人代表が適宜決定することとなります。
電子公告は、一連の作業はかなり面倒で、費用もそれなりにかかります。手続系の公告は、官報に掲載して行った方が、実務上ラクだと思います。
■決算公告を電子公告により行う方法
決算公告に関しては、電子公告調査機関の認証がいりません(会社法第941条)。
決算公告用のホームページは、他の公告事項についてのホームページとはリンクのない別のアドレスのものを登記することができます(会社法施行規則第220条第2項項)。
また、定款で公告方法を「官報」または「日刊新聞紙」と定めていても、取締役の決議で“決算公告は電子公告”とする事ができます(会社法第440条3項)。この場合には、その旨を定款の変更の必要はありませんが、貸借対照表等が掲載されるウェブページのURLを登記する必要があります(会社法第911条第3項第27号)。
登記事項は、次のようになります。
【貸借対照表に関わる情報の提供を受けるために必要な事項】
http:〜(全角文字/以下略)
決算公告を電子公告で行うメリットは、費用の安さです。官報の場合、会社規模が大きくなると掲載情報が増えるので手数料も増えますが、電子公告の場合、認証手数料がいらない為、コスト削減になります。
デメリットとして考えられるのは、5年間載せなくてはいけない事、誰にでも簡単に見られる事、内容を省略出来ないので開示の量が多い事です。
決算広告のみ電子広告にする事は、建設業や上場会社にオススメです。建設業の入札等では情報の開示が必要なので、デメリットとして挙げた部分が影響しないからです。上場会社等も同様です。
最後になりますが、公告に限らずインターネットに情報を掲載する際は、セキュリティーに細心の注意を払いましょう。
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